大谷翔平選手が二刀流完全復活―移籍後初登板で見せた“静かなる闘志”と“圧倒的な存在感”
【©️Los Angeles Dodgers,】
その一球が、663日ぶりの「覚醒」を告げた。
ドジャースの大谷翔平がついに“二刀流”としての完全復活を遂げた。17日(日本時間)、本拠地ドジャー・スタジアムで行われたパドレス戦で、「1番・DH・先発投手」として出場。移籍後初登板にして、観る者すべてに“唯一無二”の存在感をまざまざと見せつけた。
▪️投手・大谷、試運転の1イニングも最速161キロの片鱗
2023年8月以来となるマウンドは、まるで映画のクライマックスのようだった。地鳴りのようなスタンディングオベーションに迎えられ、大谷は静かに、しかし力強くプレートへと歩を進めた。
初回、1番タティースJr.に打たれたのは不運なセンター前。続くアライズにはこの日最速の161キロを記録するも、ヒットを許して無死一・三塁のピンチを招く。だが、そこから粘りを見せた。犠牲フライで1点こそ失ったが、以降は危なげない投球。28球を投じて2安打1失点。まだ試運転段階ながら、“投手・大谷”が確かに帰ってきたことを印象づけた。
▪️打者・大谷、試合を決めた“自責を返すバット”
マウンドを降りたその直後、大谷は汗も拭かずにネクストバッターズサークルへ向かう――この日最も象徴的なシーンのひとつだった。
第1打席は三振に倒れるも、第2打席。2死三塁の好機で迎えた場面、大谷は外角スライダーを見事に左中間へはじき返し、自らが失った1点を“自分のバットで”取り返した。大谷らしい、背中でチームを引っ張る一打だった。
さらに5回には、内角高めの158キロを右前へ強引に持っていくタイムリーでこの日2打点目。勝負所で打つ、打線の軸としての責務も完遂した。
最終打席では四球を選び、打者成績は4打数2安打2打点、1四球。打率は再び.300に乗せ、今季24度目のマルチ安打。3試合連続の好調ぶりも見逃せない。
▪️ベンチ、ブルペン、観客席――大谷が生む“感情の連鎖”
4回、相手の死球に激高するA.パヘス。両軍ベンチがざわつく中、真っ先にグラウンドに身構えたのは大谷だった。その姿には、野球選手としての本能だけでなく、「このチームは俺が守る」という覚悟が垣間見えた。
試合はドジャースが中盤以降に逆転し、最終スコア6-3で勝利。リリーフ陣も盤石の継投で試合を締めた。
▪️「いいイメージを持って前進できる一日だった」――次なる章へ
試合後、大谷は淡々と語った。
「結果的にはいまいちでしたが、自分の中でいいイメージを持って前進できる、いい一日だったと思います」
この言葉には、数字には表れない“確信”が宿っていた。