韓国FIFTY FIFTYの訴訟に見る「名誉毀損」と韓国法の適用実態とは
©️ATTRAKT
韓国のガールズグループ「FIFTY FIFTY」をめぐる法的争点が再び注目を集めている。所属事務所ATTRAKT(アトラクト)の代表チョン・ホンジュン氏が、SBSの時事番組『それが知りたい』の制作陣を名誉毀損で提訴した件について、ソウル南部地方法院(地裁)は今年、一審で「名誉毀損には該当しない」との判断を下した。
▪️番組内容をめぐる訴訟の経緯
本件の発端は2023年8月に放送された同番組。FIFTY FIFTYと所属事務所間の専属契約を巡る紛争を取り上げた特集は、メンバー側の証言を中心に構成されていた。番組内ではK-POP業界全体の契約構造や収益モデルにも踏み込み、一部の視聴者や芸能関係者からは「偏向的報道」や「不正確な事実認識」が指摘されていた。
これを受け、チョン代表は番組制作者らを相手取り、虚偽の報道による名誉毀損として、約3億ウォン(約3000万円)の損害賠償を請求。しかし裁判所はこの訴えを退けた。
▪️韓国における名誉毀損の法的基準
韓国では名誉毀損は刑事・民事の両面から規定されており、事実による名誉毀損であっても一定の条件下で成立する。刑法第307条では「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、2年以下の懲役または500万ウォン以下の罰金に処する」としており、「虚偽事実」の場合はより厳しい処罰対象となる。
一方、放送・報道など公益性が認められる場合は、名誉毀損が成立しないケースも多い。今回の裁判でも、裁判所は「放送内容が虚偽であることを認識して放送したとは言えない」とした上で、「番組に一定の偏りは見られるが、それが直ちに名誉毀損行為とは言えない」との見解を示した。
加えて、番組側がチョン代表に対し数十回にわたりインタビューを打診したにもかかわらず、すべて拒否されたことも判断の一因とされた。韓国の裁判では、報道対象者の発言機会が十分に提供されたかどうかも、名誉毀損成立の可否を左右する重要な要素となる。
▪️FIFTY FIFTYのグループの現状と今後
FIFTY FIFTYは2023年に元メンバー4人が専属契約の効力停止を求める仮処分を申請し、大きな騒動へ発展。その後、唯一訴訟を取り下げたメンバー・キナが事務所に復帰し、新体制での活動を再開していたが、2025年5月7日に健康上の理由で活動を一時中断することが発表された。
この一連の騒動は、韓国エンタメ業界における契約慣行、報道の自由と名誉権のバランス、そして芸能人の法的保護について改めて議論を呼び起こしそうだ。