【RWS】大﨑一貴選手、聖地ラジャで戴冠ならず 完敗の先に示した“挑戦者の矜持”
ムエタイの聖地で、日本王者の挑戦は届かなかった。
それでも、その姿は確かな爪痕を残した。
ムエタイ最高峰シリーズ「RWS(ラジャダムナン・ワールドシリーズ)」のラジャダムナンスタジアム80周年記念大会(R80)が27日、タイ・ラジャダムナンスタジアムで開催された。セミファイナルでは、ラジャダムナンスタジアム認定バンタム級王座戦が行われ、RISE世界スーパーフライ級王者の大﨑一貴選手(29=OISHI GYM)が、王者ジャルンスック・ブーンラナームエタイ(19=タイ)に判定0―3で敗れ、王座戴冠はならなかった。
試合は、ムエタイの完成度を誇る王者が主導権を握り続ける展開となった。
大﨑選手は持ち味の打撃で打開を図り、カーフキックで流れを変えかける場面もあったが、首相撲からの膝、肘を軸にしたジャルンスックの巧みな試合運びに封じ込められた。
5ラウンドを通してペースを奪い返すには至らず、判定は三者とも45―50。数字以上に厳しい内容だった。
試合後、大﨑選手は自身のX(旧ツイッター)を更新。
「完敗でした。ジャルンスック選手、強かったです」と率直に敗戦を認めたうえで、「多くの方に支えていただいたのに結果を出せず申し訳ありません」と、応援への感謝と悔しさをにじませた。
弟でRISEバンタム級王者の大﨑孔稀も「敵地で戦う姿は本当にカッコよかった。でも、だからこそ結果が欲しかった」と胸中を吐露。兄弟での再起を誓った。RISEの伊藤隆代表も「負けたら終わりではなく、諦めたら終わり」とエールを送り、再挑戦への期待を口にした。
さらに、夫人でありISKA世界王者でもあるMISAKIは、「普通なら何度も倒れている試合。それでも最後の1秒まで倒しに行った姿勢は誇り」と、極限の中で戦い続けた精神力を称えた。
この一戦について、RWSでの経験も豊富なK-1バンタム級王者・石井一成選手は、
ラジャダムナン特有の空気感やRWS仕様のグローブに言及。
「少しでも気持ちが落ちると飲み込まれる」と、異国の地で戦う難しさを語った。
なお、大﨑選手にはそのファイティングスピリットが評価され、「ファイターズ・スピリット賞」として通常の2倍となる50万バーツ(約250万円)が贈られた。
完敗という結果の裏で、挑戦者としての姿勢は確かに認められた形だ。
ラジャの王座は遠かった。
しかし、日本王者がムエタイ最高峰の舞台で示した覚悟と闘志は、次なる挑戦への確かな糧となる。

