三谷ドラマ「もしがく」第9話で小栗旬さんが“蜷川幸雄役”に突如登場 大胆キャスティングは作品の転換点か
【©️フジテレビ】
フジテレビ系の“水10”ドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(三谷幸喜脚本)の第9話が26日に30分拡大で放送され、俳優・小栗旬さん(42)が事前告知なしで登場した。
小栗さんが演じたのは、演劇界の象徴的存在であり自身の“恩師”でもある蜷川幸雄氏。
放送終盤、わずか十数秒の出番ながら、視聴者の間で大きな話題を呼んだ。
しかし今回のサプライズは、単なる“豪華ゲスト”の投入にとどまらない。三谷作品の世界観の中で、リアルな演劇史の人物を実名で登場させるという演出は、このドラマが現実と虚構を交錯させながら進んできた路線を、より鮮明にする試みでもある。
■“世界のニナガワ”を小栗旬が演じる意味
1984年の渋谷を舞台にした本作は、三谷幸喜氏の青春期を下敷きにした群像劇。
しかしここにきて、久部三成(菅田将暉)が憧れてやまない蜷川氏が、小栗さんの姿で画面に現れるという大胆な仕掛けが投入された。
小栗さんは自身のコメントで「まさかこのような役をお受けする日が来るとは思いませんでした」と語ったが、その裏には、03年の「ハムレット」以降、蜷川演出舞台の中心を担ってきた“愛弟子”としての重責がある。単なる模倣ではなく、若き日の蜷川像を“小栗さんなりの記憶”から再構築するという試みで、
作品自体が持つメタフィクション性をさらに強める結果となった。
■物語的にも放送戦略的にもターニングポイント
第9話では、主人公・久部を取り巻く劇場の崩壊と再生が描かれたが、小栗さん演じる蜷川氏の登場は、久部というキャラクターの“指針”を象徴する存在として置かれている。物語上の節目で投入されたこのキャスティングは、実質的には第10話以降の構造を大きく書き換える布石とも受け取れる。
制作側が放送前に一切告知をしなかった背景には、
視聴体験を最大化する狙いがあったことは明らかだ。
■三谷作品常連の“合流”という側面も
小栗さんが三谷作品に登場するのは「鎌倉殿の13人」(2022年)以来3年ぶり。
同作キャストのゲスト出演が続く中、今回でついに“小栗合流”が実現した。
だがその戻り方が、本人の演劇キャリアの原点でもある“蜷川幸雄役”だった点は象徴的と言える。
三谷ドラマの枠に、現実世界の演劇史のレジェンドを“愛弟子の演技”という形で呼び込む――この演出は、単なるファンサービスではなく、作品全体のテーマ「舞台と人生の境界」に踏み込む試みとも読み取れる。
■次回以降、作品はさらに“舞台の裏側”へ
次回予告でも、小栗演じる蜷川氏は物語に関与する場面が示唆されており、最終章に向けて「もしがく」がどこまでリアルとフィクションを交錯させるのか注目される。
なお、次回の第10話は12月10日に放送。
12月3日は「2025 FNS歌謡祭」のため休止となる。

