文化作品に罪はない―『クレしん』公開見合わせ、中国過敏反応の裏に政治的影響も

2025.11.20

【©TOHO CO., LTD】

日本の人気アニメ映画『クレヨンしんちゃん』の中国本土での公開が、政府の反発を理由に延期されたとの報道が波紋を広げている。さらに『鬼滅の刃』の興行収入も急減しており、日中間の文化交流の現状に暗い影を落としている。


 

かつて、日本発のアニメ映画が中国で連続上映される光景は珍しく、近年の広がりは日中間の文化的結びつきの強まりを示していた。しかし、今回のような過剰反応は、作品そのものの価値や芸術性を無視したものだ。文化的表現は政治状況によって左右されるべきではなく、創作物に罪はない。

加えて、最近の日本国内での政治的発言が、日中関係に影を落としている点も見過ごせない。高市早苗総理は就任後、歴史認識や安全保障に関する発言を繰り返しており、これが中国側の反発を強める一因になっているとの指摘がある。

過去の歴史を紐解けば、日中間の文化交流は政治的緊張と密接に絡んできた。1970年代の日中国交正常化以降、映画や音楽、文学の交流は両国関係の潤滑油として機能してきたが、歴史問題や領土問題で関係が悪化すると、文化コンテンツへの規制が直ちに強化されるケースが何度も見られた。

例えば、2012年の尖閣諸島問題では、日本映画やアニメの上映が相次いで延期・中止となり、文化的経済的影響は数十億円規模に上った。また、韓国がTHAAD配備を決定した際にも、韓国ドラマやK-POPの放送規制、団体旅行の禁止などが行われ、文化・経済双方に影響を及ぼした。

この「チャイナリスク」は、世界最大級の消費市場を前に

日本アニメ業界にとって無視できない現実である。

とはいえ、興行中の『鬼滅の刃』は上映中止には至っておらず、削除や修正も最小限にとどまっている。

これは、中国国内でも日本アニメへの理解や人気が高まっている証左だ。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でも大幅なカットは行われず、文化的作品への過敏な規制が必ずしも作品の受容を左右しないことを示している。

文化は国境を超え、人々に楽しみや学びをもたらす。

政治的・感情的な反応で創作物を排斥することは、芸術表現の自由を損なう行為にほかならない。

日中間の文化交流が持続するためには、政治的な摩擦に影響されず、

作品そのものの価値を尊重する姿勢が求められるだろう。