パリ五輪の銀メダリストが禁断のドーピング解禁イベント大会出場(米国)でスポーツ界に激震
【©️Enhanced Games】
2024年パリ五輪・競泳男子50メートル自由形銀メダリストの ベンジャミン・プラウド(30=英国) が、来年2026年5月に米ネバダ州ラスベガスで開催される “ドーピング解禁大会”「エンハンスト・ゲームズ」への出場を表明した。
通常の国際大会では当然禁止される薬物使用を容認する前代未聞の試み。プラウドは英BBCの取材に対し「自分がどこまでできるかを試す新たな機会だ」と語り、まるで“強化版オリンピック”を肯定するかのような姿勢を示した。
▪️「クリーンスポーツの否定」か「人類限界への挑戦」か
プラウドの決断は競技団体の猛反発を招いている。
英国オリンピック委員会は「冷笑的で危険なイベントだ」と非難。英国アンチドーピング委員会のジェーン・ランブルCEOも「スポーツ精神を踏みにじるもの」と強く批判した。
さらに国際競技団体は「参加すれば今後の公式大会から永久追放」との厳罰方針を打ち出している。
一方で、「人類の限界を見たい」という好奇心も高まっているのも事実だ。
今年2月のトライアル大会ではギリシャの クリスティアン・コロメーエフ が男子50メートル自由形で 20秒89の驚異的な世界記録 を樹立。
非公認ながら100万ドル(約1億4700万円)の賞金を手にした。
主催者は「公式記録には残らないが、観客は未知のスピードを目撃する」と胸を張る。
▪️巨額の賞金が呼ぶ“禁断の挑戦者”
「エンハンスト・ゲームズ」では、世界記録更新に 1億5000万円規模の賞金 が用意されるとも報じられている。
選手にとっては“名誉”ではなく、“金と極限”を賭けた舞台。
プラウドの参加表明は、単なる個人の挑戦を超えて
「スポーツの未来はどちらに進むのか」という大きな問いを突きつけている。
「エンハンスト・ゲームズ」とは何か!?
ドーピング解禁を掲げる“禁断の大会”の全貌
■ 概要と理念
「エンハンスト・ゲームズ」は、「薬物や遺伝子編集など科学技術を駆使し、人間の能力を極限まで引き出す」という思想を掲げる大会。
創設者でオーストラリア出身の投資家 アロン・ダヴィッドソン氏 は「オリンピックは古い。私たちは人類の未来のスポーツをつくる」と語り、“強化版オリンピック”とも呼ばれている。
■ 競技種目
陸上、競泳、体操、格闘技など五輪種目に準じた競技が中心。
ルール自体は従来と同じだが、ドーピング検査が存在しない 点が最大の違いだ。
筋力増強剤、持久力向上薬、さらには遺伝子治療までもが使用可能となり、“人間兵器”同士の戦いが想定される。
ただし、生命を削る可能性があるため、選手の安全性が強く懸念されている。
■ 賞金システム
「栄誉」より「金銭的インセンティブ」に重点を置く仕組みも特徴。
世界記録更新者には 100万ドル(約1億4700万円)規模の賞金 が支給される。将来的には1億5000万円規模の報奨金も検討されているという。
■ 波紋を呼ぶ倫理観
国際オリンピック委員会(IOC)や各国アンチドーピング機関は強く反発。
英国オリンピック委員会は「冷笑的で危険なイベント」と糾弾し、参加選手には国際大会の永久追放処分を警告している。
一方で「スポーツはエンターテインメントの一種。観客は人間の限界突破を見たがっている」という擁護論も根強い。
■ 参加を表明する選手たち
最大の注目は、現役トップ選手の参加表明だ。
パリ五輪銀メダリストの ベンジャミン・プラウド が「自分の限界を試したい」と語り出場を決断。今後、他競技でも有力選手が続けば、従来のスポーツ界との対立が決定的になる可能性もある。
■ スポーツの未来を分ける分岐点
「人類の進化を先取りする祭典」なのか、「倫理を踏みにじる危険な見世物」なのか。
エンハンスト・ゲームズは、スポーツの価値そのものを揺さぶる存在になりつつある。
来年の本大会が実現すれば、スポーツの未来像を根底から変える可能性は大きい。
日本の人気漫画『範馬刃牙』シリーズに登場する
“ドーピング格闘家”のジャック・ハンマーのような想像上の存在が、
現実の2026年に姿を現す日も遠くないのだろう。
【文:高須基一朗】