那須川天心選手の初ボクシング世界戦で父が見抜いた“異変”辛口の言葉に込められた、誰よりも深い信頼
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プロボクサー那須川天心選手が挑んだキャリア初のボクシング世界戦。
そのリングを、誰よりも厳しい目で見つめていたのは父・弘幸氏だった。
22日までに更新されたYouTubeチャンネル「格闘キャスト」に出演した弘幸氏は、WBC世界バンタム級王座決定戦で井上拓真と激突した息子の姿を振り返り、「戦っている目が、これまでと違って見えた」と静かに切り出した。
試合は序盤から拮抗。
4回終了時の公開採点は三者三様のドロー。中盤以降も一進一退の攻防が続き、会場は緊張感に包まれた。結果は判定で井上が勝利し、天心選手はプロ初黒星を喫した。
世間では「経験不足」を指摘する声も上がったが、弘幸氏はそこに首を振る。
「経験値なら、天心は決して負けていない」
キックボクシング時代に積み上げてきた修羅場の数々。
だが今回、その“勝ってきた経験”が、ボクシングという新たな舞台で十分に発揮されていないように映ったという。
特に目についたのは、試合中の構えと足の使い方だった。
「足を練るようなディフェンス重視の動きが多すぎた。あれでは攻撃力が削がれる。体を動かし、ステップでリズムを作り、その流れで打つ―キック時代にできていたことが、出ていなかった」
パンチの打ち方にも言及する。
「縦の動きだけで手打ちになっている。横、上下、体全体を使った“攻防一体”の動きが足りなかった」
そして最も厳しい言葉が飛び出したのは、4ラウンド終了後の印象についてだった。
「正直、あの時点で“追い込めていない”と感じた。自分を極限まで追い込めていないと、闘争心は前に出てこない。ノーガードも、苦し紛れに見えた」
一見すれば辛辣にも聞こえるこの指摘。
しかし、その根底にあるのは失望ではない。
むしろ、誰よりも息子の“本来の強さ”を知っているからこそ出てくる言葉だ。
「できるはずなんです。だからこそ、もったいない」
弘幸氏の言葉は、敗戦を断じるものではなく、次の一歩を促すメッセージだった。
世界の壁に初めて触れた天心選手が、この経験をどう咀嚼し、どう進化するのか。
その可能性を、父は今も疑っていない。

