プロボクシング初のヒジャブ着用女子選手がデビュー戦を制す=パキスタン

【from zeina nassar official Instagram】
パキスタン・ラホールで26日、歴史的なプロボクシングの試合が行われた。
ドイツ国籍のレバノン系ボクサー、ゼイナ・ナサルさん(27)が、
プロデビュー戦で満場一致の判定勝利を収め、世界中の注目を集めた。
ナサルさんは女子バンタム級(6ラウンド・各2分)の試合で
タイのカノコワン・ウィルンパット選手と対戦。
試合中、ナサルさんは頭から手足までを覆う黒色のヒジャブ兼全身カバーを着用し、ジャブを軸に試合の主導権を握った。
一方のウィルンパット選手は通常の試合用ウェアで長い髪を後ろで束ねていた。
ナサルさんの試合用ウェアには「THE MUSLIM MISSES」の文字があしらわれ、
フード型ヒジャブにはスポンサーのナイキのスウッシュロゴが輝いていた。
ナサルさんはベルリンで育ち、13歳の時にユーチューブで女子ボクシングを見てボクサーを志した。練習の間もヒジャブを着用していたが、当時のドイツのアマチュアボクシング規定では出場は認められていなかった。
ナサルさんは14歳で規定改正を実現し、長袖と頭を覆うスカーフで公式戦に出場可能となった。
その後、ベルリンチャンピオン、ドイツチャンピオンとタイトルを重ねた経歴を持つ。
国際舞台でも活躍を目指したナサルさんは、19歳から国際ボクシング規定の変更を求める活動を展開。
2019年には国際ボクシング協会(IBA)がヒジャブ禁止規定を撤廃し、
現在はオリンピック競技を管轄するワールドボクシングでも
ヒジャブと全身カバーの着用が認められている。
ナサルさんは「私の活動により、アマチュアボクシングの女子選手が自分のアイデンティティを守りながら戦えるようになったことが最も誇らしい」と語った。
▪️ヒジャブの歴史と文化的意義─イスラム世界における布の物語
ヒジャブは、イスラム教徒の女性が髪や体を覆うために用いる布として知られる。
しかしその起源や歴史は一枚の布に留まらず、宗教・文化・社会の変遷と深く結びついてきた。本稿では、ヒジャブの歴史を時代ごと説明。
▪️ヒジャブの起源と古代の使用
ヒジャブの概念は、イスラム教成立以前の中東地域にも見られる。古代メソポタミアやペルシャでは、貴族や女性が顔や頭を覆う習慣があり、社会的地位や家庭内の役割を示す象徴として用いられた。
イスラム教成立後、ヒジャブは宗教的教義として取り入れられ、女性の「控えめさ」を示す手段として発展していった。
▪️イスラム初期から中世まで
7世紀のイスラム教誕生とともに、ヒジャブはクルアーンやハディースに基づく服装規範の一部として広がった。当初は地域や文化による差異が大きく、単に頭髪を覆う布から、顔や体全体を覆うスタイルまで多様であった。
中世イスラム社会では、ヒジャブは女性の尊厳や家族の名誉を象徴するものとされ、都市部ではより厳格に実践される傾向があった。
▪️近代化とヒジャブの変化
19世紀以降、植民地支配や西洋文化の流入により、ヒジャブの着用に対する考え方は変化した。トルコやイランなど一部地域では、女性解放や近代化の一環としてヒジャブ着用が制限される時期もあった。
一方で、宗教的・文化的アイデンティティの象徴として、着用を続ける地域も存在。
▪️現代におけるヒジャブ
21世紀の今日、ヒジャブは単なる宗教的義務だけでなく、個人の信念やファッション表現の一部としても広く認識されている。
ヨーロッパや北米では、教育や職場での着用を巡る議論も活発化しており、
ヒジャブは宗教的自由と個人の権利の象徴として国際的にも注目されている。
ヒジャブの歴史は単なる服装の変遷ではなく、
文化・宗教・社会制度の変化を映し出す鏡とも言える。
古代の習慣から現代のグローバルな議論まで、
ヒジャブは女性のアイデンティティや社会的役割を語る重要な文化的シンボルである。

