武尊選手、闘い続ける理由は“勝利”だけじゃない!再起戦KO勝利で得た775万円を、またも「子どもたちの未来」に

2025.11.19

【©️ONE Championship,】

華やかな格闘技のリングの中心に立つたび、

武尊選手という格闘家はただ勝敗を競うだけの存在ではなくなる。

勝つためにすべてを懸ける純粋さと、人としての温かさ。

その両方を兼ね備えているからこそ、多くのファンが彼を愛してやまない。


 

16日に行われた「ONE 173」(有明アリーナ)。
今年3月、ロッタン・ジットムアンノンに痛恨の1ラウンドKO負けを喫してから8か月。再起の舞台となったデニス・ピューリック戦で、武尊選手は“らしさ”を取り戻し、

2回TKOで鮮やかに勝利した。

会場には、待ち続けたファンの歓声が響き渡った。

試合後、武尊選手は次戦を「引退試合」と明言。

かつて敗れたロッタンをラストマッチの相手に指名すると、ロッタンも即座に受諾。

チャトリ・シットヨートンCEOは、4月29日の「ONE 175」での実現を正式に発表した。
最後の相手に、もっとも立ち向かいたい男を選ぶ。

この選択こそが、武尊選手という人間の生き方そのものだ。

 

▪️“強さ”よりも“優しさ”が勝る男

再起戦の勝利を称え、チャトリCEOから贈られたのは5万ドル(約775万円)のKOボーナス。しかし、その使い道を問われた武尊は迷わなかった。

「東南アジアで、次の学校建設の予定地を探しています。ボーナスは、そのために使いたい」

勝利を重ね、名声を得た選手は少なくない。だが、ファイトマネーやボーナスを“未来のために”使う格闘家がどれほどいるだろうか。

武尊選手は2023年、初代タイガーマスク・佐山サトル氏から「七代目タイガーマスク」を託され、国内外で社会貢献活動を続けている。

東南アジアでは2023年から学校建設プロジェクトを開始。

今年4月にはベトナム・ランビン郡に念願の学校を開校。

電気も満足に届かない地域の子どもたちに、学びの場が生まれた。

格闘家としての人生が、遠く離れた地で子どもたちの未来につながっていく。

戦う姿が勇気になり、勝利が学校になる。

そんな生き方を選ぶ武尊選手に、改めて“チャンピオン”の意味を教えられる。

 

◆最終章へ―その先にあるもの

格闘技人生の集大成での引退試合と定めるロッタン戦。
一度敗戦を喫し、因縁の相手を前に、最後の炎を燃やす覚悟はすでに決まっている。しかし、その一方で武尊選手は、リングの外での活動も走り続ける。

「自分が戦ってきたことで、誰かの人生が少しでも良くなるなら、それ以上の幸せはない」

素晴らしい言葉を残し続ける格闘家としての鏡のような存在、偏った見方をしてはいけないのだが、やはり最後の引退試合は勝利してほしいと切に願ってしまう。


【文:高須基一朗】