今永昇太投手、戦略的FAへ・・・米メディア驚愕の決断の裏にある“次の一手”

【©️MLB】
カブスの今永昇太投手(32)がフリーエージェント(FA)となる。
球団が3年5775万ドル(約89億円)の契約延長オプションを行使せず、
今永自身も1年1525万ドル(約23億円)の選手オプションを拒否。
現地時間3日(日本時間4日)、
ESPNやMLB公式サイトなど複数の米メディアが報じた。
シカゴでは「衝撃的決定」との見出しが躍り、地元紙『シカゴ・サンタイムズ』は「彼を失えば先発ローテーションは悪化する」と危機感をにじませた。
一方で、今永選手のFAは、単なる決裂ではなく
“双方の計算”に基づく選択だとの見方も強い。
▪️カブス再編の波 延長オプション行使を見送った理由
今永選手は2024年1月、カブスと4年総額5300万ドル(約81億円)の契約を締結。
球団側には2028年までの延長オプション(3年総額5775万ドル)が設定されていた。
だがカブスは、チーム再編の最中にあり、年俸総額の再配分や若手投手陣の台頭を踏まえて「中長期的な柔軟性」を優先したと見られる。
『サンタイムズ』紙によれば、ジェド・ホイヤー編成本部長はシーズン終了後に「彼は素晴らしいチームメイトであり、組織にとって価値ある存在」と高く評価していたが、チーム事情からオプション行使は見送られた。
カブスは近年、先発陣の高額契約を避け、育成路線に舵を切る傾向を強めている。
30代を迎える投手への長期投資を控えるのは、その方針の延長線上にある。
▪️今永選手がオプションを拒否した“本当の理由”
一方、今永選手自身も選手オプションを行使せず、FAを選択した。
これは消極的な「離脱」ではなく、むしろ積極的な「市場テスト」の意志を示すものだ。
MLB全体で先発投手市場が薄い今オフ、今永は実績・年齢・健康面でバランスが取れた“即戦力左腕”として高い評価を受けている。
米『ヤフースポーツ』は「FA市場で最も注目される先発の一人」とし、仮にカブスがクオリファイング・オファー(約34億円)を提示しても「今永はそれを拒否して市場に出るだろう」と分析した。
▪️パフォーマンスと課題
今永選手はMLB1年目に15勝3敗、防御率2.91の好成績を残し、オールスターにも選出。新人王投票で4位、サイ・ヤング賞投票では5位に入るなどインパクトを残した。
しかし2年目は下半身の故障で離脱期間があり、
9勝8敗、防御率3.73とやや安定感を欠いた。
一部米メディアは「年齢の上昇とともに被長打傾向が目立った」と分析しており、
球速・キレの維持が次の契約評価の焦点となる。
▪️狙うは“再挑戦と上積み” 今永の視線はすでに次へ
今永選手がFAを選んだ背景には、「年俸」だけではなく「環境の最適化」という要素もある。
日本時代からチーム運営や起用方針への意識が高い今永にとって、起用法が固定化されつつあるカブスよりも、ローテーションの再編を進める球団や優勝争いのチームの方が“次の挑戦の場”として魅力的に映った可能性が高い。
また、来季のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)前哨戦を見据えた日本代表入りの可能性を踏まえると、より高い注目度を維持する舞台選びは理にかなっている。
FA解禁から数週間以内に複数球団が動くのは確実と見られ、
今永選手の代理人サイドも戦略的に“短期+高年俸型契約”を模索しているとされる。
▪️双方にとっての“円満な別れ”
地元紙が嘆く一方で、カブスと今永の関係は悪化したわけではない。
むしろ双方にとって“タイミングの一致した円満な別れ”と見る向きが多い。
カブスは再構築を、今永は再評価を―互いがそれぞれの方向を向いた結果のFAだ。
今永選手の選択は、年齢を理由に衰えを語る声を打ち消すための
「次の証明のステージ」への布石でもある。
静かな笑みの裏にあるのは、緻密な計算と、再び頂点を狙う意志だ。
