EUがグッチ、クロエ、ロエベに制裁金280億円“値下げ禁止”はなぜ問題?競争法違反の背景とは
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は10月14日、
イタリア「グッチ」をはじめ、
フランス「クロエ」、
スペイン「ロエベ」の3社に対し、
計約1億5700万ユーロ(約280億円)の制裁金を科したと発表した。
理由は「販売代理店に不当な価格制限を課した」ことで、EUの競争法、いわゆる独占禁止法に違反したと判断されたためだ。
▪️値引きを“禁止”した高級ブランドたち
欧州委によると、3社は2015年から2023年にかけて、販売代理店に対し店舗やオンラインショップでの値下げを制限。セール期間の指定や、場合によっては値引き販売そのものを禁止していたという。
これにより、販売店は自由な価格設定ができず、結果として市場全体で商品の価格が高止まりし、消費者の選択肢が狭まったと指摘されている。
▪️“再販売価格維持”とは?
EU競争法が厳しく取り締まる理由
問題とされたのは「再販売価格維持(Resale Price Maintenance)」と呼ばれる行為だ。
これは、メーカーが小売店に対して「この値段より安く売ってはいけない」と強制する仕組みで、日本でも独占禁止法で原則禁止されている。
EUでは特にこの行為に厳しい姿勢を取っており、「市場での自由な価格競争を妨げるもの」として、過去にも家電メーカーやゲームプラットフォーム企業などが同様の制裁を受けている。
高級ブランドの世界では「ブランド価値の維持」を理由に価格統制を行うケースも多いが、EU当局は「高級であっても消費者の利益を損なう行為は許されない」との立場を貫いている。
▪️欧州で広がる“公平な競争”への監視強化
今回の処分は、EUがここ数年進めている「デジタル市場と流通の公正化」政策の一環でもある。
欧州委はAmazonやAppleなどの巨大IT企業にも同様に競争法を適用しており、ブランドや業種を問わず「市場の透明性」を求める姿勢を鮮明にしている。
EU当局は声明で、「消費者が自由に価格を比較し、より良い条件で買える環境を守ることが最優先だ」と強調した。
グッチなどの各社は制裁金支払いに応じるか、法的手段を取るか検討しているという。
▪️消費者への影響
高級ブランドの“定価文化”は変わるのか
今回の制裁は、単に3社だけの問題にとどまらない。
欧州では長年「高級品=値下げしない」という文化が根付いてきたが、オンライン販売の拡大により、価格比較が容易になった今、こうした“定価の神話”にも見直しの動きが出ている。