NBAとAWSが描く未来 AIが変えるバスケットボールの見方
NBAがスポーツ業界に対して、また一歩先の未来へと踏み出した。
リーグはAmazonのクラウドサービス「AWS」と
複数年のパートナーシップを結び、
試合の楽しみ方や選手の評価を大きく変えていくという。
これまで「点を取った」「アシストした」といった数字でしか表せなかったバスケットボールが、AIによってもっと深く、もっとリアルにファンに届けられる時代がやってくる。
▪️新しいバスケットボールの「物差し」
これまでのスタッツ(成績表)はシンプルだった。得点、リバウンド、アシスト…。しかしそれだけでは語れない部分がある。例えば「どれだけ相手を苦しめたか」「ボールを持っていなくても相手の注意を引きつけていたか」といった要素だ。
AWSとNBAは、AIで選手の動きや位置を解析し、次のような新しい指標を発表する予定だ。
・ディフェンシブ・ボックススコア
誰が誰を守っていたかをリアルタイムで把握。ブロックやスティール以外の「地味だけど効いている守備」を数値化する。
・ショット難易度
「入ったか外れたか」ではなく、そのシュートがどれだけ難しかったかを評価。姿勢やディフェンスのプレッシャーも考慮される。
・グラビティ(引力)
ボールを持っていなくてもディフェンスを引きつける力を測定。スター選手がコートにいるだけで生まれる“空間の広がり”が数値で見えるようになる。
これらは2025-26シーズンから導入予定。従来のボックススコアに新しい「ものさし」が加わり、ファンも解説者も、これまで気づかなかったプレーの価値を知ることができる。
▪️AIが解説者に“もう一人の頭脳”を与える
新プラットフォーム「NBA Inside the Game powered by AWS」では、数千試合分のデータから似たプレーを検索できる「Play Finder」という機能も搭載される。
例えば試合中に似た戦術が出れば、即座に過去の事例を呼び出し、解説者は「これはあの試合と同じ戦術だ」とリアルタイムに説明できる。ファンは戦略を理解しやすくなり、バスケットボールを“見る”だけでなく“学ぶ”楽しみが広がる。
▪️世界中のファンを一つにつなぐ
今回の提携は数字やAIだけの話ではない。NBA公式アプリやNBA.com、そして「NBA on Prime」などの配信もAWSを活用して強化される。
世界中どこからでも、言語や好みに合わせたパーソナライズされた観戦体験が可能になる。
実際に今季からはPrime Videoでレギュラーシーズン66試合が配信され、10月25日にはニックス対セルティックス、ティンバーウルブズ対レイカーズという注目カードが幕を開ける。
▪️バスケットボールの未来を加速する
NBA幹部のケン・デジェナロ氏は「このパートナーシップはライブ観戦をより豊かにし、ファンの理解を深める機会を与えてくれる」と語る。一方、AWSのフランチェスカ・バスケス氏も「クラウドとAIでスポーツを再定義する」と意気込む。
AIが数値化するのは、これまで「感覚」でしか語れなかった選手の価値だ。
バスケットボールは点を競うスポーツでありながら、そこに至る無数の動きと駆け引きがある。その見えにくい部分がデータとなり、ファンの目の前に広がる―。
NBAとAWSの提携は、単なる技術革新ではない。
それは「バスケットボールをもっと面白くする挑戦」そのものだ。