デュプランティス、棒高跳で世界の常識を再び塗り替える 東京で6m30の大記録
【©️東京2025世界陸上/ World Athletics Championships】
東京世界陸上(9月13~21日、国立競技場)の男子棒高跳で、アルマンド・デュプランティス(スウェーデン)が再び歴史を動かした。現地15日夜、6m30をクリアし、自身が持つ世界記録を更新。通算14度目の世界新で、大会3連覇をも成し遂げた。
▪️“記録を破ることが日常”の領域へ
棒高跳という競技は、本来「届かない高さへの挑戦」が醍醐味だ。しかしデュプランティスにとっては、その「届かない高さ」が次々と手の届くものへと変わっている。6m00を超えた時点で勝負は決着し、観客の視線は「どこまで記録を伸ばすのか」に集中した。
世界陸上や五輪のタイトルを積み重ねるだけでなく、試合ごとに世界新を狙う姿勢は、すでに競技の在り方そのものを変えつつある。
▪️東京との特別な縁
彼にとって国立競技場は単なる舞台ではない。
2021年の東京五輪で初の世界タイトルを獲得した場所であり、当時は無観客の中で静かに頂点へ立った。それから4年、今回は5万人の大観衆が声援を送り、スタジアム全体が記録誕生の瞬間を共有した。
デュプランティスは「観客のエネルギーが力になった。最高の雰囲気だった」と語り、東京の地で改めて特別な思いを口にした。
▪️世界記録更新が“義務”となる新時代のスター
現在の連勝は35。直近の敗北は2023年8月までさかのぼる。誰もが「勝つこと」ではなく「世界記録の更新」を期待する中で競技に臨む。そのプレッシャーは計り知れないが、本人は「慣れたこと」と笑う。
「6m30」という響きには、彼自身も特別な意味を込める。「6m29よりも、はるかに特別な記録。世界陸上で達成できたことがうれしい」と語り、余韻に浸ることなく、すでに次の挑戦を見据えているようだった。
陸上競技において、記録の更新はしばしば数年単位で待たれるものだ。しかしデュプランティスの場合、それは“毎シーズン当たり前の出来事”となりつつある。彼の存在は棒高跳の枠を超え、「人間の限界」という概念そのものに挑み続ける象徴となった。