『聖闘士星矢』の魂を歌い続けた男─NoBこと山田信夫さん、61歳で逝去
1980年代後半、日本のアニメ史に燦然と輝く作品『聖闘士星矢』は、熱い友情と闘志を描く物語で世界中のファンを魅了した。その冒頭を飾る主題歌「ペガサス幻想(ファンタジー)」は、今なお世代と国境を超えて歌い継がれるアニソンの金字塔である。
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この不朽の名曲を力強く歌い上げたロックボーカリスト、NoB(本名・山田信夫)さんが8月9日、腎臓がんのため東京都内の病院で亡くなった。61歳だった。
所属事務所が13日、発表した。
NoBさんは1984年、ハードロックバンド「MAKE-UP」のボーカルとしてデビュー。1986年、同バンドが手がけた『聖闘士星矢』のオープニングテーマ「ペガサス幻想」は、力強いシャウトと伸びやかなメロディで、瞬く間にアニメファンとロックファン双方を魅了した。この曲は、当時のアニメ主題歌の枠を超え、日本の音楽シーンに「アニメとハードロックの融合」という新たな可能性を示したと言われる。
以降、NoBさんは『聖闘士星矢』の象徴的存在として、国内外のイベントやライブで同曲を歌い続けた。南米では星矢ブームが社会現象化し、サンパウロやメキシコシティの大観衆を前に歌った「ペガサス幻想」は、現地ファンにとって青春そのものだった。
特撮ソングでも存在感を発揮し、『轟轟戦隊ボウケンジャー』『天装戦隊ゴセイジャー』など数多くの主題歌を担当。
ハードロックの血を受け継ぐその歌声は、アニメと特撮、二つの世界で長く支持され続けた。
2017年には腎臓がんの診断を受け、余命5年と告げられながらも「歌うために生きる」という信念を貫いた。闘病中も国内外でのステージに立ち、最後の瞬間までアーティストとしての姿勢を崩さなかったという。
盟友であるキーボーディストの河野陽吾さんは「彼はロックの炎を燃やし続けた人。『聖闘士星矢』の歌声とともに、彼の魂はこれからも世界中で響き続けるだろう」と語った。
『聖闘士星矢』は今年で放送開始から39年。
黄金聖闘士たちのように、NoBさんもまた、仲間やファンの心に「不滅の小宇宙(コスモ)」を灯し続けたアニソン界の人気歌手の1人だった。