井上尚弥選手が歴史を塗り替えるTKO勝利!! 4団体統一王座の防衛回数で“カネロ”に並ぶ偉業

2025.5.5

【Digital photo by Hiroshi.t】

 

プロボクシング界にまたひとつ、金字塔が打ち立てられた。現スーパーバンタム級の絶対王者、井上尚弥(32=大橋)が、ラスベガスのT-モバイル・アリーナでWBA世界同級1位のラモン・カルデナス(29=米国)を8回45秒TKOで下し、4団体統一王座の4度目の防衛に成功。これにより、サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)と並び、4団体統一王座の防衛回数で歴代最多タイとなった。

さらに注目すべきは、その勝ち方だ。井上はこの勝利で世界戦のKO勝利数を「23」に伸ばし、伝説的なヘビー級王者ジョー・ルイスを上回って、史上単独最多の記録を更新した。

 

▪️まさかのダウン、しかし即時回復で立ち上がる“モンスター”

試合序盤、予期せぬ展開が訪れる。第2ラウンド、カルデナスの左フックを浴びた井上はプロキャリアでわずか2度目となるダウンを喫した。アリーナを包むどよめき。しかし、それは“モンスター”を呼び覚ますきっかけに過ぎなかった。

ダウンから素早く立ち上がると、井上は冷静に試合を立て直し、4回にはジャブを起点とした多彩な連打で試合の主導権を奪取。5回、6回と相手をロープへ追い詰め、7回にはついにカルデナスからダウンを奪う。勝敗を決定づけたのは第8ラウンド。コーナーへ追い込まれた挑戦者に対し、鋭い右ストレートからの連打を叩き込み、レフェリーが試合を止めた。

 

▪️ラスベガスでの歓声、そして覚悟のKO劇

井上にとってラスベガスでの試合はこれが3度目。過去2戦は新型コロナウイルスの影響で無観客または入場制限が課されていたが、今回は2万人を収容するT-モバイル・アリーナでの開催。

世界のボクシングの聖地で、ついに本格的な歓声を背にリングへ立つ日が来た。

「この試合はKOで終わらせないといけない」
そう語っていた井上は、言葉通りの試合運びを実現し、約4年ぶりとなるラスベガスのリングでの勝利を飾った。

会場での井上ファンは2割程度。途中、ダウンを奪った後には『メキシコ』の大合唱が響き渡る中での試合で、

印象としては、井上にとってアウェイの空気感だった。

カルデナスは、幼少期に貧困の中で生活していたことが知られている。

経済的に厳しい環境の中で育ち、その境遇が彼のファイティング・スピリットを育んだとされる。

カルデナスはメキシコ系アメリカ人であり、そのルーツから多くのメキシコ系ファンの支持を集めている。今回の試合でも、ラスベガスの会場では彼を応援するメキシコ系観客の声援が多く見られた。

こうした支持は、彼の生い立ちやバックグラウンドに共感する声の現れといえる。

 

▪️次なる舞台は5階級制覇と東京ドーム決戦へ

今後のスケジュールも、世界中のファンの注目を集めることは間違いない。9月には日本で、WBA世界同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との統一戦が内定。さらに12月には階級を一時的にフェザー級へと上げ、サウジアラビアでWBA王者ニック・ボール(英国)との一戦に挑む。実現すれば日本人初、史上8人目の5階級制覇が懸かる。

そして来春には、東京ドームでの一大決戦。WBC世界バンタム級王者・中谷潤人との頂上決戦が計画されている。

この勝利で井上尚弥は30戦全勝(27KO)、一方のカルデナスは26勝(14KO)2敗となった。ボクシング史を塗り替え続ける“モンスター”は、次なる伝説に向けて着実に歩みを進めている