“育成システムの成功例”がK-1を去る―軍司泰斗選手と玖村将史選手の「卒業」が残すもの
2025年4月30日にK-1の屋台骨を支えてきた2人が相次いで発表
K-1 WORLD GP第5代フェザー級王者・軍司泰斗(K-1ジム総本部チームペガサス)と、Krush第6代スーパー・バンタム級王者・玖村将史(K-1ジム五反田チームキングス)が、この日をもってK-1との契約を満了。
翌5月1日、K-1公式サイトおよび両選手のSNSにて“卒業”が発表された。
2人はまさにK-1の育成システムが生んだ成功例。
アマチュア大会からKrush、そしてK-1の本戦へとステップアップし、
タイトルを手にするという理想的なキャリアを歩んできた。
軍司はK-1甲子園王者、Krush王者、K-1王者という“3冠制覇”。
玖村は国内外の強豪をなぎ倒しKrush王座を戴冠――
共にK-1の中心選手として人気・実力を兼ね備え、
多くのファンを魅了してきた。
▪️相次ぐ主力選手の“卒業” K-1の岐路
しかし、今回の契約満了は単なるキャリアの一区切りにはとどまらない。
実際、ここ数年でK-1からは武尊、野杁正明、与座優貴、安保瑠輝也、木村“フィリップ”ミノル、皇治といったトップ選手たちが続々と離脱している。
もはや「K-1からの卒業」は、年中行事のように繰り返されている。
背景には、他団体(海外団体)とのマッチメイクの柔軟性、ファイトマネーの格差、そしてK-1ブランドそのものの求心力の低下があると見られている。
今回の軍司・玖村両選手も、それぞれ「感謝」と「新たな挑戦」を強調したコメントを発表。しかし裏を返せば、K-1がもはやトップファイターたちにとって“終着点”ではなくなりつつあることをも示唆している。
▪️K-1ブランド復権への道は?
かつて「K-1=最強」の看板は、格闘技ファンにとって絶対的なものだった。
だが今や選手たちは、より大きな舞台、より高額な報酬、より激しい競争を求めて旅立っていく。選手流出が続けば、K-1は“育成団体”としては機能しても、“最前線”としての輝きを失いかねない。
もちろん、新たなスターの台頭や世代交代は格闘技界にとって必要不可欠な循環だ。
だが軍司や玖村のように、背景に「物語」を背負った選手たちの退団は、単なる戦力の喪失以上に、ファンの“感情移入の軸”を失わせるという側面もある。
今こそK-1には、再び「夢の舞台」として機能するための抜本的な改革――興行戦略、人材マネジメント、ブランド価値の再構築が求められている。
▪️“その後”のK-1に問われるもの
2人がどの舞台で次なる挑戦を始めるのか。もちろん注目が集まるのは当然だ。
だがそれ以上に見つめるべきは、彼らが去った“その後”のK-1である。
いま残された選手たちは、問われている――「君たちはK-1を背負えるか?」と。
その中で、大久保琉唯のように新たなスター候補が台頭してきているのも事実だ。
新陳代謝が健全に進めば、K-1は再びその地位を取り戻せるはずだ
「卒業」が繰り返される中で、本当に問われるべきは、
K-1という“学校”そのものの価値ではないか。
【文:高須基一朗】