INTERVIEW
前田日明
+page1
+page2
高坂“TK”剛
+page1
+page2
ロシア特集
カイシノフ・ゲオルギー
デゼボエフ・アスラン
バザエフ・オレグ
K-1 WM 2005 展開予想




― 先週は映画の撮影に出られていたという話を聞いたんですが、どのような作品なんですか。
高阪(以下、TK)『THE WINDS OF GOD』という 今井雅之さん作の戦争をテーマにした映画なんですよ。
― 『THE WINDS OF GOD』といえば、確か、ニコラス・ペタスさんも出演されてますよね。
TK そうなんです。ニックとは仲がいいんですけど、偶然にこの作品の出演が決まってびっくりしましたよ。
― やはり、兵隊さんの役柄をされるんですか。
TK いや、軍医です。これが、ちょっとすごかったんですよ(笑)。今井雅之さんを怒鳴ったりだとか、そういうことを平気でやる役なんです。
― うわあ、おいしい役じゃないですか(笑)。先ほども高阪さんのHPを拝見させてもらっていたんですが、今現在は新しくできるジムを作っている最中でもあるんですよね。先日の試合のあとも、休む暇がないほどお忙しいんじゃないですか。
TK いやいや、今年に関しては年が明けた瞬間からそのつもりでいましたから。「今年は休む暇がないな」って腹をくくっていましたからね。
― それにしても、HPに掲載されていた工事現場の高阪さんの写真はよかったですね(笑)。『現場』とTシャツ姿の阪さん、何か似合っていましたよ。
TK ええ、自分は基本的に『現場好き』ですから(笑)。
― 『現場』にご自分も参加されるということはないんですか。
TK 時間があるんだったら自分もやりたいんですけど今回はそういうわけにもいかないんで、全部職人さんにまかせてしまっていますね。
― では、早速、先日のPRIDEの試合についてお話をお聞かせください。まずは、ヒョードル戦の感想についてはどうでしたか。
TK まず、一番に悔しい試合だったということですよね。もちろん、試合に負けたという意味でもそうなんですが、それ以上に、自分の仕事をやり切れずに終えてしまったということがすごく心残りになりましたね。
― 僕はあのときPRIDEの記者会見ブースにいたんですが、モニターから見ていても非常に出血が激しかったように思ったんです。そのあたりはどうだったんですか。
TK そうですか。いや、自分本人としては「大丈夫かな」って思っていたんですけどね。というよりも、自分では(血が出ていることが)わかんなかったんですよ。もう、試合に夢中になっていましたからね。
― 今でもまだ左眼のほうが赤くなっているようですが。
TK これは大丈夫ですよ。いつものことですから。目ン玉にボン!ってパンチが当たると絶対こういう風になっちゃうもんなんですよ。
― 他のケガの具合などはどうですか。
TK いや、要するにね、今回ケガをしたのはここ(左眼)だけなんですよ。いつも試合をした翌日にはその部分がすごく腫れるので月曜日の朝には顔がお岩さんのようになってしまうんですけど、火曜日には眼が開くようになって、その日の夜には傷がすでに塞がってかさぶたができていましたからね。だから、水曜日の朝には、実は完全復活していたんですよ。
― とんでもない治癒力ですね(笑)。
TK ありがたいことなんですけどね(笑)。そんなわけで、まあ、問題はここ(左眼)だけだったわけですから、その他の体の部分は全然元気だったんですよ。だから、月曜日の段階でできることなら練習をはじめたかったくらいでしたね。そのくらい今回の試合に関しては自分の中で『出し切れなかった感』が残りました。やっぱり、悔しかったですね。
― その『悔しさ』の中には、今回の試合に対するモチベーションの強さがゆえにという部分もあると思うんですけど、やはりヒョードル戦というのは特別な試合でしたか。
TK そうですね。まさに今回は『勝てば官軍』でしたからね、極端な話ですけど、ヒョードルに勝ったらこの格闘技界の中で何でも言える立場になるわけじゃないですか。そのくらいの相手だし、そのくらいの地位にいる選手だと思うんすよ。やっぱり、こういう格闘技というのは非常に博打のような側面を持っていて、その賭けが大きければ大きいほどその分の報酬は大きいんですよね。だから、こそ余計に気合が入るところがあるし。まあ、全体的に見れば、自分にとっては大博打のようなものだったんですけどね。
TK 左眼が全然見えなかったものですから、自分自身もよくわからなかったのが本当のところなんですよ。どういう感じで(右パンチが)飛んできているのか、全然つかめていなかったんですからね。ただ、やっぱり、格闘技ってそういうもんだと思うんですよ。ケガもそうですけど、試合中に起こったことは最大限に有効活用しないといけないと思いますから。それにこうも勝つために必死になっているわけですからね。もし自分が相手の立場になっていたら、やっぱり同じことをしていると思いますよ。だから、それはものすごくフェアな試合なやり方だと思っているんですけどね。
― でも、ご本人としても相当苦しい試合だったんじゃないですか。
TK 確かに大変な試合になりましたね。
― どういった点が大変でしたか。
TK いや、やっぱり見えなかったのはキツかったですよ。左眼が見えていたのは最初の一、二分くらいだけだったんじゃないかな。それからはすっと何も見えない感じが続いたわけですからね。
― ということは、最初の出血の時点で何も見えなくなっていたということですか。
TK そうですね。ずっと眼の周りがぼやけているような状態でしたね。でも、どちらにせよ、試合中に何が起こるかわからないというのは当然のことだと思うんですよ。やっぱり、試合というのは生き物ですからね。だから、それを自分の中で処理できなかったというのは、自分にまだまだ甘い点があるということだと思うんです。そういう点に関しては、格闘技を志すものとして、自分に腹が立ちますね。
― 他に何か問題点になるようなことはありましたか。
TK テイクダウンが取れなかったということですよね。ヒョードルという選手は上になってパウンドを打っているときは非常に強いんですけど、彼が下になっているシーンというのはあまり見ないと思うんですよね。だから、自分が上になってヒョードルを下にしてしまえば、間違いなく彼の試合のリズムを壊すことになるだろうし、何か技をかけるチャンスというのも生まれたと思うんです。でも、なかなかそこまでたどり着けなかったんですよね。やはり、ヒョードルに関しては腰の重さと反応の速さがありますからね。さすが『トップの選手』という感じですよ。
― 以前のインタビューのときに「ヒョードルは自分の『気』を消すのがうまい」という話をしていただいたと思うんですが、今回試合をしてみて改めてそのことを実感されましたか。
TK オーラというかね、自分はすごくビックリしたんですけど、最初にリングでお互い向かい合うときにパッとヒョードルを見たら、全然『素』のまんまだったんですよね。自分の方はすごく気合が入っていたんで「やったるわい!」という気持ちでリングに上がったんですけど、ヒョードルはそういうところを微塵も見せなかったですね。「あれ、コイツ本当にやる気あんのか!?」って思ったくらいでしたし。でも、あれがヒョードルにとって全快の状態なんでしょうね。ヒョードルが今まで試合をしてきた選手から「冷血などうたらこうたら」って言われる訳がわかりますよ。「なるほど、このことを言ってるんだ」って自分も思いましたしね。
― では、もう少し核心的なことについて質問させていただきたいんですが。先ほど「ヒョードルを下にする」というお話が出たじゃないですか。それというのが試合前にお話されていた『ヒョードルの弱点部分』ということになるんですか。
TK いやいや、それは別問題ですね。でも、今の段階ではそのことについてまだ何とも言えないんですよ。ただ、ヒョードルと試合をする選手はみんなやろうとしていることだと思いますよ。とは言え、あの試合の自分もそうだったんですけど、それがなかなかできないもんなんです。まあ、今回の自分自身のことを考えてみたら、今回あのような形で試合をすることで、すごくヒョードルという人間が見えた気がするんですよ。もちろん眼じゃないですよ(笑)。攻め方だとか抑え方だという点で、ですね。
― つまり、次回の試合のための勉強ができたということですよね。そういえば、ヒョードル選手が試合後の記者会見で「機会があれば、また高阪選手と試合がしたい」ということを言っていたんですよ。それはご存知ですか。
TK いや、知らなかったです。
― それについては、もちろん高阪選手としてはもう一度試合がしたいという気分だと思うんのですが。
TK それは、やりたいですよ。できることなら、すぐにでも試合がしたい。次の日とかも本当に体が元気だったんで「家でいいからもう一回試合をさせてくれ」ってずっと思っていましたから(笑)。とにかく元気で、ぴんぴんしていたんですよ。だから余計に悔しかったんですよね。あれが本当にぐったりしていて身動きも取れない状態だったらそんな気持ちも起こらなかったんだと思うんですけど。自分、久しぶりに二日連続で寝れなかったですよ。悔しいのと体がムズムズしてしまうのとで。
― ムズムズしてしまうというのは?
TK 寝ながら色々試合のことを考えているんで、体が勝手に動いてしまうんですよね。次第に力が入ってきて、肩がどんどん上の方に上がってきてしまったり……。そんなことをずっとしていると、ベッドの上で寝ているだけなのにどんどん汗だくになってくるんです(笑)。でも、ジムのことや他の仕事のことを考えたら寝なきゃまずいんで、極力忘れようとしたんですけどね。でも、やっぱりダメでしたね。
― そういう寝れない体をリフレッシュさせるために、何かやったことはあったんですか。
TK いやいや、いつもなら釣りに出かけるんですけど、今回は眼が見えないわけですからね。だから、仕方なく今作っているジムの現場に出かけて、意味もなく天井にぶら下がったり、ボードを持ち上げたりして気を紛らわせましたよね、「ああ、こんなに重いのを使ってるんですね」とか言っていちいち言い訳しながら(笑)。
〔一同、爆笑〕
― だったら、天井にぶら下がったり、重いボードを持ったりするのもまずいじゃないですか(笑)。
TK もちろん、ぎりぎりのところでやめましたよ(笑)。
― 今はもう練習を再開されていいんですか。
TK もう大丈夫ですよ。だから今にも早くトレーニングがしたいんですよね。
― トレーニングはいつ頃から再開される予定なんですか。
TK いや、今日これからやり始めますよ。試合の翌日からずっとムズムズしていましたからね、このあたりで欲求不満を解消しなくちゃマズイですよね(笑)。
(C)モッツ出版

(c)2005.One Vision TV.All rights reserved