INTERVIEW
須藤元気
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アルバート・クラウス


新田明臣





― 他に印象的だったことは?
須藤 『友人の飲酒運転に同乗して事故に遭った日』かな。車に乗っていたんですけど、僕、反対車線までふっとばされちゃったんですよ。
― 本当ですか? ひどいですね。
須藤 そのときは救急車に運ばれましたからね。
― 怪我の診断はどうだったんですか。
須藤 診断も何も、全部英語で話されたので何を言っていたかさっぱりわからなかったですよ。(笑)。でも、最初目が見えなかったですからね。相当ひどかったんじゃないですか。
― 腫れていたんですか?
須藤 腫れていたというより、黒目の部分がしろくなって視界がぼやけてしまうんですよね。そのときはさすがに「これで格闘家人生終わったな」と思いましたね。でも、僕、そういうところでもポジティブなんですよ。すぐに「じゃあ、次何になろうかな?」って考えていました(笑)。でも、結局治ってよかったですけどね。
― その経験で何か変わったことはありましたか?
須藤 やっぱりいろんな面で謙虚さが足りなかった部分があったと思うんですよ。そのとき、何でも自分でうまくできると思い込んでいましたから。でも、その一件があってから、自分に驕れないで初心に返った気持ちで物事をやるべきなんだなって実感しましたね。僕は歴史書も読むんですが、歴史の登場人物もそういう点ではみんな同じなんですよ。みんな大きな傷を負ってから、身の回りの大切なことに気づくんですね。だから、あの事件は自分にとってもそれからの人生を決めた大きな出来事だったんじゃないかと思うんですよね。
須藤 他に思い出深いことは、何かあったかな……。これは一般的なことですけど『クリスマス』もたくさん思い出がありますね。僕、学生のときに、ストリート・ミュージシャンをやっていたんですよ。だから、『クリスマス』の頃になると外に流しをしに出て行って、ひとりで歌をうたっていたんです。
― 『クリスマス』といえば、てっきり彼女と一緒に過ごした思い出のことだと思いがちなんですけど、そういうわけじゃないんですね?
須藤 むしろ、反対です。当時僕は「彼女がいないクリスマス」に酔っていたんですよ(笑)。
― つまり、「ああ、世間はクリスマスなのに僕は独りぼっちだ」みたいな状況に酔っていたということですか?
須藤 そうそう。高校二年、三年の冬のことでした(笑)。そういうことをやった経験があるから、今現在ストリートでアコースティックギターを掻き鳴らして歌をうたっている人の気持ちが痛いほどよくわかるんです。
― そうなんですか。
須藤 ああいう風に路上ライブをやっていると、自分じゃない誰かになりきれるような気がするんですよ。しかも、その自分がだんだんかっこいい存在のように思えてきてしまうんです。だから、僕もその頃になると「オレにはクリスマスなんて関係ねーぜ!!」みたいな感じで、自分に酔うことが楽しくなってしまっていたんですね(笑)。普通、学生時代のクリスマスといったら、好きな女の子と一緒にいることでドキドキするものだと思うんですけど、僕の場合はひとりぼっちでいる淋しさに無性にドキドキ感を感じていました。しかも、集まってきてくれたお客さんに「お前らのために歌うぜ、ベイビー」みたいなことをいってしまったりしてましたね(笑)。
― 他に思い出に残るイベントごとは何かありますか。
須藤 『クリスマス』の次は、当然『バレンタインデー』ですよね。学生のとき、特に中学生くらいのときには絶対意識しますよね。そのくらいのときだと、『バレンタインデー』は一年間の中のメインイベントじゃないですか。だから、その日の一日って何かいつもと違うんですよね、学校の空気感が。
― 確かに、みんな勢いがありますからね。登校するときからして全然空気が違います。
須藤 それで、下駄箱ですれ違うクラスメイトの女の子を横目でチラリと確認してしまったりするわけですよ。それで、いつもより鞄が厚くなっているのに気づくと、「もしかしたら、僕にかな?」とか余計なことを考えてしまうんです(笑)。
〔一同、大爆笑〕
須藤 だいたい毎年二月に入る頃になると、男の子は周りの目を意識し始めますよね。
― つまり、十四日にチョコをもらえるようにアピールをするわけですよね。
須藤 そう。やっぱり自分のかっこいいところを周囲に見せたいから、妙に目立とうする行動をしてしまうんです。体育でバスケットボールをしているときに、やたらに3ポイントシュートを狙いにいってしまったりね。まあ、たいていの場合はリングに入らないんですけど(笑)。
― 高校生のときはどうでしたか?
須藤 僕は男子校に行っていましたから、バレンタインデーの盛り上がりはいまいちだったんですよ。でも、中学生の頃はクラスの中に女の子がちゃんといるじゃないですか。だから、その分すごく意識してすごくドキドキしていましたね。
― 確かに、中学生の頃のバレンタインデーは非常に緊張感のある時間だったように思いますよ。
須藤 その結果次第で、それからすぐにある春休みの過ごし方が全然変わっていくわけですからね、それはそれは相当な緊張感ですよ。でも、そういうときに限って期待を裏切られたりするんですよね。僕も結局好きな女の子からチョコはもらえず、悲しい帰り道をとぼとぼと歩いて帰った経験がありましたよ。
― 一個ももらえなかったというわけではないですよね?
須藤 もちろん、友達の子からは義理チョコをもらいましたよ。でも、そういうのって一番好きな子からもらえなかったら全然意味がないじゃないですか。でも、そういうドキドキ感がすごく楽しかったですね。
― なるほど。他は何かありますか。
須藤 『大晦日』、『元旦』ですね。よくみんなで日の出を見に行ったりしていましたよ。
― 日の出を見る場合、須藤選手は「山」派ですか、「海」派ですか。
須藤 やっぱり『海』派ですね。でも、中学生のときは自転車で荒川に行ったり、新木場に行ったりして見ていましたよ。
― 小さい頃の初日の出というのは、年の始めの縁起物という意味合いだけじゃなく、友達と集まって遊ぶ楽しさがありましたものね。
― 他にアメリカ留学時代まつわることで何か記憶に残っている日はありますか。
須藤 そうですね。あと、イベントごとといえば『卒業式』『入学式』も思い出深いですね。僕、人が別れて、また新しい人と出会う春の季節が好きなんですよ。
― やはり、生活する中での「節目」のような役割を持っていますからね。なんだか新鮮な気持ちになります。
須藤 そうなんですよね。
― 『卒業式』というと、第二ボタンをもらう、もらわないというのがありますよね? 須藤選手の場合、ボタンの行方はどうだったんですか。
須藤 僕、中学生のとき「野上さん」という女の子のことを一年生のときから三年間ずっと好きだったんです(笑)。さっきのクリスマスもバレンタインも、言ってしまえば「野上さん」のための日だったようなものなんですよ。でも、僕はすごくシャイな性格で、卒業するまで一度も話したことがなかったんです。だから、卒業式の日に力を振り絞って告白したんですね。
― なんだか、いい話じゃないですか。やりますね、須藤選手。
須藤 いやいや、そのとき見事にフラれたんですよ。
〔一同、大爆笑〕
須藤 でも、「野上さん」がいたおかげで中学三年間とても楽しかったですよ、本当に。
― その「野上さん」は今何をされているんですか。
須藤 ちょっとわからないです。まあ、そのうちに、テレビ番組の「初恋の人に逢いたい」というような企画でご対面といきたいところですよね(笑)。
― なんで須藤選手はフラれてしまったんでしょうか。相手に好きな人でもいたんですか。
須藤 それがね、自分が告白して、フラれて、学校を卒業してから知ったことなんですけど、どうやら「野上さん」は僕が一番仲のいい親友のことが好きだったみたいなんですよ。
― 複雑な関係だったんですね(笑)。
須藤 そのことは僕が学校を卒業するまで知らなかったんですよ。「野上さん」自身も奥手な人で、そういうところを全然見せませんでしたから。
― つまり、二人ともシャイな性格だったわけですね。
須藤 そうだったんだと思いますよ。でも、僕に関しては、「野上さん」のことが好きなのを学校全体が知っていたんです。中一の時点で「野上さん」自身も知っていたくらいでしたから。
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