INTERVIEW
須藤元気
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アルバート・クラウス


新田明臣





―今回のインタビューでは、「須藤元気に関する10のこと」というテーマでいろいろお話をしていただいて、あの『元気ワールド』の徹底解明を行おうと思っているんですよ。
須藤 なるほど。面白そうな企画ですね。
― それには、やはり自分を見つめ直しやすい場所が必要なんじゃないかと思いまして、このような「お寺」というロケーションを選ばせていただいたんです。確か、須藤選手は日常生活で「瞑想」で精神統一をすることがよくあるそうですよね。そういうときは、やはりこういう場所で瞑想されるんですか?
須藤 いや、お寺ですることはほとんどないですよ。いつも瞑想するときは、自分が前から気に入っている場所やフィーリングが合う場所ですることが多いんです。その場所がいいなと思ったら、公園やロケ先でもすることがあるんですよ。でも、こんな感じのお寺や神社も大好きですけどね。
― そうなんですか。
須藤 僕、司馬遼太郎さんの小説が大好きなんですけど、その作品の中に『空海の風景』という本があるんです。前にそれを読んでから、だんだん空海という人物に非常に興味を持つようになったんですよ。それからますますお寺や神社のような場所が好きになっていったんですよね。こういうスピリチュアルな場所にいると、気分が落ち着いてくるじゃないですか。なんだかそういうのが気持ちいいんですよ。
― クラウス選手からしてみて、今回の一番の勝因は何だったのでしょうか。
クラウス やはり、自分のやりたいペースで試合運びをコントロールできた点じゃないでしょうか。もちろん、相手は王者という最高の実力を持った選手ですから警戒していた部分は大いにあったのですが、そんな中でも冷静に自分自身の動きを考えて、自分のやりたいことを最大限にできるように努力をしました。それが勝利につながった最大のポイントだったのだと思います。
― 空海といえば四国の「八十八カ所めぐり」が有名ですけど、須藤選手は四国に行かれたことはあるんですか。
須藤 それがまだなんですよ。まとまった時間を作って一度お遍路さんに行ってみたいんですけど、なかなか時間が取れなくって。行く機会があれば、本当に行ってみたいですね。
― では、さっそく本題に入りましょう。今ちょうどお寺が好きだというお話が出ていたので、まずそのことからお聞かせください。須藤選手はお仕事でも、プライベートでも様々な場所に訪れることが多いと思うんですが、〈好きな10の場所〉を選ぶとしたら、どのようなところがありますか。具体的でも抽象的でもかまいません。
須藤 まずさっき話した『寺・神社』ですね。それと『富士山』なんかもいいですよね。
― 『富士山』は登られたことはあるんですか。
須藤 いや、特にないんですけど、富士山が見える場所がとても居心地がいいんですよね。あとは、抽象的になってしまうんですけど『イギリス』ですかね。僕、これまで三回ほど行っているんですが、あの国は非常にフィーリングが合う感じがするんです。それと、お約束ですけど、『温泉』は最高ですね。
― 『温泉』は決まったところがあるんですか。
須藤 具体的な場所というのはないんですけど、源泉かけ流しのところは最高ですね。そこにはこだわりますよ。……あと、『森の中』。
― 緑はいいですよね。特に森林浴をすると気持ちが元気になりますからね。
須藤 そうなんですよ。でも、都会の中の『表参道』なんかも好きなんですよ。『銀座』や『日本橋』あたりもいいですね。歩いていているといろいろなものがあって楽しいですよね。
― 他はどうですか。
須藤 やっぱり『実家・地元』は落ち着きます。あとは『海』ですね。僕の地元から『海』が近いんですよ。そういう風に小さい頃から見慣れている風景だから、足を運ぶと気持ちが安らぎますよね。 
― なるほど、では次の質問にいきます。確か、須藤選手は昨日お誕生日だったんですよね。
須藤 そうなんですよ。二十七歳になりました(笑)。
― 改めまして、お誕生日おめでとうございます。〔一同、拍手〕
須藤 ありがとうございます。
― そこでなんですが、須藤選手にとっての〈思い出深い一〇の日〉を選んでほしいんですが、どうでしょうか。お誕生日やクリスマス、個人的なメモリアル・デーでもかまいませんので……。
須藤 『うるう年』。
― いきなり、そこですか(笑)。
須藤 「何で一日余ったんだろう?」って、そういうこと気になりませんか?〔一同、大爆笑〕
須藤 でも、考えてみると不思議な日なんですよね。結局、時間というものが存在しない、決まりごとの上で成り立っているものなんだということを証明した日であるわけですから。
― なるほど。さすが、須藤選手ですね。
須藤 あとは、やっぱり『誕生日』ですかね。
― 何かお誕生日にまつわるエピソードはありますか。
須藤 二十一歳のときの誕生日は特に思い出が深いですね。その当時、僕はアメリカに留学していたんですけど、あっちでは二十一歳になるまで法律上お酒が呑めないんですね。日本の場合だと未成年でもお酒を買うことができるじゃないじゃないですか。でも、アメリカの場合だとIDを持っていないと絶対お酒を買うことができないんです。だから、ようやく二十一歳になって堂々と呑み屋に行ってIDを見せてお酒を呑んだときは、「大人になったんだなァ」としみじみ思いましたね。
― IDを見せることができる瞬間が、いわゆる大人への第一歩になるわけですね。
須藤 そうなんです。あっちの店員も二十一歳になりたてのIDを見て、「へぇ、大人になったんだ。よかったじゃん」みたいな暖かい視線をくれるんです(笑)。そういうのが本当にうれしくて。今でも鮮明に記憶に残っていますね。
― 他にアメリカ留学時代まつわることで何か記憶に残っている日はありますか。
須藤 『アメリカから日本に帰ってきた日』がありますね。実は渡米する際、プロの格闘家になるまで絶対帰ってこないって決めて行ったんですよ。それほど固い意思だったということもあって、日本を発つときには空港に友達がたくさん集まってくれて、みんな泣きながら「がんばってこいよ」って言って胴上げをしてくれたんですね。
― ああ、いい友達ですね。
須藤 本当にそうなんですよ。それから僕は向うで奮闘して、どうにかデビューが決まって帰国することになったんです。それで、久々に戻る日本のことを考えながらすごくドキドキして飛行機に乗っていたら、隣の席に座っている人がいて話しているうちに仲良くなったんですよ。そのときは帰国に向けてテンションが上がっている最中ですから、「実は、僕、プロの格闘家になるためにアメリカに留学していたんですけど、今回やっとデビューが決まって帰国することができるんですよ。実は僕には本当にいい仲間がいるんです。今日もその仲間が仕事を休んで全員空港に駆けつけてくれて、帰国する僕を空港で待っているんですよ」っていうことを話したんですね。
― わかります、わかります。
須藤 でも、そのうち話がだんだん「僕の友達の素晴らしさ」みたいな内容になって、ざっと十時間ですよ。お互い睡眠も取らず、飛行機に乗っている間ずっとその話をしゃべり続けてたんです。もう気持ちがこみ上げてしまって歯止めが効かないんですよ(笑)。
― よっぽど、友達に会えるのがうれしかったんですね。
須藤 うれしいですよ。やっぱり、ずっと僕のことを絶対的に信頼して来てくれた仲間に顔合わせができるわけですから。それで、着く直前になって、アメリカに行くときに友達からもらった襷をトイレに入ってシャツの下に身につけたんです。みんなに会ったとき、これで出て行ったらすごく盛り上がるだろうな、と思ったんですね。それを隣の人にも見せて、「今トイレで(襷を)仕込んできちゃいました」とかわざわざカミングアウトしたりしてたんですよ。そんな最高の興奮状態でようやく成田に到着したんです。
― 空港にはどのくらい友達が集まっていたんですか。
須藤 それが、一人しか迎えに来ていないんですよ(笑)。
〔一同、大爆笑〕
須藤 しかも、そいつが一番初めにいった言葉が「元ちゃん、みんな仕事で来れないって」ですよ。僕も頭の中が真っ白になってしまって何も言葉が出なかったんです。それで、隣に同乗していた人もその状況を的確に察して「じゃあ、僕はそろそろこれで……」という感じでスタスタと行ってしまったんですよ。
― それまで迎えに来るだろう大勢の友達の話をずっと聞いていたわけですからね。確かにその状況は気まずいですよ(笑)。
須藤 でも、僕がその状況を全然喜んでいないのを知ると、今度は友達の方も気まずくなってしまったんです。「げ、元ちゃん、僕ひとりだけで不満なの?」とか言い出しちゃって(笑)。やっぱり、その友達には飛行機の中の状況はわからないですからね。
― 踏んだり蹴ったりですね(笑)。
須藤 そうしたら、ずっと隠れていた友達たちが一斉に影からバッと飛び出てきて、僕の周りを囲みだしたんですよ。つまり、仲間たちは僕を驚かせようとしていたんですね。それで、派手に胴上げされて帰国したことを祝福してもらったんですけど、それでも僕は素直に喜べないんですよね。いなくなってしまった同乗者の方にはまだ誤解が解けていないわけですから。「ちょっと、待って。ちょっと、待って」ってみんなを制して、そのときばかりは「コラー」って怒りましたよ(笑)。それから、「もういいから、とにかくその人を探して」っていって、友達みんなと手分けして同乗していた人を探したんです。でも、結局その後見つからなくて、未だに誤解は解けないままなんですよ。
― キツイですね。その人とは十時間も友達自慢を話していたわけですよね。
須藤 そうですよ。もう恥ずかしすぎて、一週間くらい気分が落ち込んでいましたもの。
― この紙面でその誤解が解けたらいいんですけどね。
須藤 本当にそうですね。あの人がこの雑誌を読んでくれればいいんですけど(笑)。
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