― まずは、年末の試合の勝利、おめでとうございました。 |
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魔裟斗 ありがとうございます。 |
― それにしても、年末はすごい大盛況でしたね。特にあの二人の試合に関しては、大晦日に行われたカードの中で一番盛り上がった内容になったんじゃないでしょうか。視聴率の方でも記録的な数字を叩き出しましたし、日本中があの一戦に注目していたといっても過言ではないでしょう。そんな伝説的な試合について、当の本人である魔裟斗選手はどのように感じられていたんでしょうか。まず、そのあたりからお話をお願いします。 |
魔裟斗 感想って言われても、ねえ(笑)。別に何にもないですよ。 |
― そうなんですか。やはり魔裟斗選手としては、挑戦を受ける立場にあったわけですから、今回の試合は、消化試合的なニュアンスの方が強かったということなのかもしれませんね。 |
魔裟斗 まあ、食らっちゃったな、という感じですね。 |
― どうしてあのときダウンを奪われたんでしょうか。もう少し詳しく状況を教えてくださいませんか。 |
魔裟斗 タイミングを外されただけでしょう。あの瞬間、VTRで確認してもらったらわかると思うんだけど、オレも左フックでカウンターを狙っているんだよね。でも、フックとストレートだったらストレートの方が速いに決まっているでしょ? だから、ちょっと当たっちゃっただけですよ。 |
― 記者会見後のインタビューでは「あれはフラッシュダウンだった」というようなことを言っていましたが、そういう認識は今でも変わっていないですか。 |
魔裟斗 それはそうでしょ。あれはたまたま当たっちゃっただけですからね。 |
― でも、試合をする前、魔裟斗選手はKID選手のパンチは当たらないということをおっしゃっていたじゃないですか。それなのにパンチでダウンを奪われてしまったということは、やはり相当な悔しさのようなものがあったんじゃないかと推測するんですが。 |
魔裟斗 もちろん試合直後は多少ありましたけど、今は全然ですよ。 |
― 気持ちの切り替えができてしまっているということですか。 |
魔裟斗 試合から時間が経っていますからね。格闘技のことから気持ちが切り替わっているというのはありますね。 |
― なるほど。では、話は変わって、反対にKID選手からダウンを奪ったときのことを聞かせてください。二ラウンドに入って、ハイキックでKID選手の顎のあたりを打ってダウンを取ったわけですけど、あれは試合中ずっと狙っていたイメージだったんでしょうか。 |
魔裟斗 いや、(試合の)流れの中でやっただけですよ。ただ、一ラウンドでハイキックを出したときから、相手が全然見えてないのがわかっていましたから、狙ったら入るだろうなというのは頭にありましたね。あのハイにはビックリしてたみたいですし(笑)。 |
― 以前(KID選手を)パンチで倒すか、ローで倒すか、それともヒザで倒すかと言うような話をされていたと思うんですが、そのあたりのことも試合中に考えていたのでしょうか。 |
魔裟斗 そうですね、何で倒すかは試合の中で決めようと思っていましたから。 |
― ということは、それだけ試合に余裕があったということになるんでしょうか。 |
魔裟斗 それもそうだし、オレ自身、どれでやっても相手を倒せる自信があったんですよ。 |
― そう言われてみると、確かに安定感のある試合をされていたような気がしますね。 |
魔裟斗 オレ、あのときすごく落ち着いたからね。試合がどう進んでいくのか見えていたから、あとはその流れに沿って、自分の動きをまとめていくことに集中すればよかった。 |
― そういうような流れの中で闘い方を考えるというやり方は、やはり対KID戦用に備えた特別な戦い方だったんですか。それとも、いつもそのようなやり方で戦略を立てているのですか。もし後者だとしたら、例えば、対ブアカーオ戦でも同じような形で試合を進めるというこもあると思うんですが。 |
魔裟斗 いや、それは全然違うと思いますよ。 |
― ということは、今回のやり方はKID選手に合わせた対策の取り方だったということですね。 |
魔裟斗 まあ、オレの場合は、相手によって全然闘い方を変えていくし、それができるだけの引き出しをたくさんもっていますからね。基本的に、パンチもキックもヒザも、何でもできるわけですから。 |
― ということは反対に、冷静に対戦相手の変化が見えているということでもありますよね。 |
魔裟斗 もちろんそうですよ。 |
― どうですか、そのように冷静に相手を観察していたとき、KID選手の中に何か気を背負っているような部分を感じましたか。 |
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魔裟斗 それはなかったと思いますよ。でも、まあ、KOを狙って一ラウンドから飛び込んでくるのはわかっていましたけど。 |
― 飛び込んでくるスピードはどうでしたか。KID選手はヒット・アンド・アウェイの方法を取っていたようですが。 |
魔裟斗 そんなに感じなかったですけどね。 |
― それは今まで対戦してきた相手と比べて、ということでしょうか。 |
魔裟斗 つーか、オレの動き、すごく速かったでしょう(笑)。 |
― ええ、観ていてすごくキレているなと思いました。 |
魔裟斗 だから、そう感じなかったんですよ。あれでオレの動きが遅かったら、KIDのパンチも速いと感じるんでしょうけど、オレもスピードで負けてなかったしね。まあ、普通の選手だったら目が追いつかないかもしれないですけど。 |
― そうですね。外から観ていてもすごくスピード感のある試合になっていました。 |
魔裟斗 どう感じました? KIDとオレ、速さが同じくらいだったでしょ? だから、そこで勝てないんだったら、KIDにK‐1で闘う技術を持ってるオレを倒すことなんて不可能じゃないですか。そもそもオレが試合で負ける要素なんて最初からなかったんですよ(笑)。 |
― 確かに、非常にめまぐるしい展開を見せているわりには非常に冷静な試合をしていたように思います。そもそも、魔裟斗選手はどのあたりから落ち着いて試合を運ぶことができたんですか。やはり、スタートから冷静だったんでしょうか。 |
魔裟斗 二ラウンド目で相手の動きは完全に見切っていましたよ。オレ、インターバルをはさんだときに(伊原)会長から声をかけられたんですけど、「大丈夫です、もう見切りましたから」って言ってたんですよね。だから、その後あたりからは余裕でしたよ。二、三ラウンドは全然パンチをもらわなかったですしね。 |
― ということは、距離もスピードも完璧に把握した中で試合をコントロールしていたということですね。 |
魔裟斗 試合の解説者が三ラウンド目も接戦だったみたいなことを言ってましたけど、そんなことないですからね。それはKIDの方もわかっていたんじゃないですか。 |
― なるほど。では、今回の核心であり、あの試合で一番注目を浴びた『ローブロー』の件について質問させてください。あのとき、倒れているKID選手を見て思わず寄って行ったシーンがありましたよね。試合中はあのような優しさが仇となるという向きもあると思うんですが、そのあたりはどのように考えていますか。 |
魔裟斗 やっぱり、それはそうだと思いますよ。 |
― もう少し冷徹にならなくてはいけないと感じているというようなコメントも記者会見で聞きましたが。 |
魔裟斗 まあ、最近は試合中でも冷静ですから、ある程度距離を置いて相手を見ているところはあるんですけどね。ただ、あのことに関して言えば、わざとではないにしろ「悪いな」と思ったんですよ。 |
― あれはクリーンヒットでしたからね。観ている方にも辛さが伝わってきましたよ。でも、そんな状態でもKID選手は試合を続行することを望んだわけじゃないですか。見方を変えれば、非常に勇気のある行動だったんじゃないかと思うんです。そのことについて何か感じることはありましたか。 |
魔裟斗 もちろん、すごいなと思いましたよ。根性ありますよ、KIDは。 |
― 魔裟斗選手の方としても、あんなことだけで試合が終わってほしくないという気持ちがあったんじゃないですか。 |
魔裟斗 あれで勝ったとしても負けたとしても、どちらの選手のためにもならないですからね。 |
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